前回の更新からかなり時間が空いてしまいましたので、まずは前回までの復習
続 僕らがバンドを続ける理由 (若いバンドさんへ向けて)
はじめるの前に。気持ちの準備のお話→ 前置き
バンドとしての目標/何を伝えたいのか?→ その1 その2
前回までは『僕が普段から若いバンドさんに向けて言っている事』だったので、それをふまえたうえで、今回はタイトルの通り『”僕”自身がバンドを続ける理由』を書いてみようかと思います。
自分…、The denkibranのお話です。
さてさて。
偉そうな事を散々書いていきましたが、じゃ実際に自分は何を考えてバンドをやっていたのか?と聞かれたら、特に若い頃なんて本当に何も考えないでやっていました。
- なんとなく、メジャーデビューしたいなぁ
- なんとなく、人気者になりたいなぁ
- なんとなく、お客さんが増えたらいいなぁ
- なんとなく、自分の曲が認められたらいなぁ
- なんとなく、The denkibranを誰かに認めて欲しいなぁ
そりゃ俺達、たいして人気でなかったわな…。
残念ながら『なんとなく』じゃ無理なんですよね。
そんな『なんとなく』では聴いてくれる人には何も伝わらないし、『なんとなく』のままだと人に何かを教える事なんてできないわけです。
だから僕は成り行きでライブハウスで働きだして、成り行きで幸運にもたくさんの若いバンドに頼ってもらえるような立場になれた時に、一生懸命、頼ってくれるバンドに話をしながら、平行して自分の事もずっと考えていました。
人に偉そうに教えを説きながら、じゃ、僕はいったい自分のバンドでは何を目指して、誰に何を伝えたいのだろうか?と。
さて、そんな『なんとなく』でやってきたバンドでも、たぶん僕がこだわってきた事が二つあります。
一つ目は『曲』
二つ目は『長くバンドを続けたい』
一つ目の『曲』に関しては、派手さはなくても、ある程度の音楽的な裏付けがあって、ずっと聞き続けられるポップス。ビートルズなどの洋楽的な要素はきちんとありつつも、日本語の歌詞で『日常』だったり『日々の普通』『少しだけ切ない気持ち』を歌いたい…という事。
二つ目の『長くバンドを続けたい』に関しては言葉のまんま。
このメンバーでいつまでもThe denkibran というバンドを続けていきたいなぁ…と、そればかりを考えて活動していました。
当時は『売れたい!』なんて口では言ってましたけど、『本当に売れたかったか?』と聞かれたら、たぶんNOで、この二つ以外の事って、もしかしたらどうでも良かったのかもしれません。
自分が嫌な事をやってまで売れたいなんて思った事もなかったし。
だから当時、『The denkibranというバンドは何を目指していて、何を成したいの?』と聞かれたら、『長く続けていきたいです』という答えになっていたと思います。
要は『バンドを続ける』事が、バンドの目的になっていました。
だから、当たり前なんですけど、メンバーチェンジは多少あれど、実際にバンドは長く続きました。
でも、20代も後半になった時にふと思ったわけです。
『あれ?このままでいいのかな?』と。
『さらにあと10年、このバンドを続けようと思った時に、はたしてこのままでいいのだろうか?』
メンバーもみんな気がつけば、20代後半の良い大人。
忙しくなり環境も変わっていくなかで、果たしてこのまんまの活動の仕方で、バンドを続けていく事ができるのだろうか?
何も目に見えた結果もないまま、音楽で人に何かを伝えたい…という目的もないまま、ただ続ける事を目的にしていって、このペースでのバンド活動を維持する事って可能なのだろうか?と。
『なんとなく続いていく』と思っていたものが、『なんとなく揺らいだ』ときに、僕ははじめて焦りました。
CDをリリースしていたわけでもない。
事務所やレーベルに所属していたわけでもない。
例えばプロフィールに書ける事といえば、当時定期的に開催していた自主企画イベントでは毎回100人以上を動員、ちょっとしたオーディションに受かって、ちょっとしたオムニバスCDに参加して…ぐらい。
目に見えた”結果”なんて何もありませんでした。
そんなバンドがこのまんまのペースで続けていけるのだろうか?
あれ?人生のかなりをバンドに注ぎ込んでいるのに、これでいいのかな?と、ふと我に返ってしまったんです。
その時がある意味で、はじめて自分が『The denkibranというバンドに向き合った瞬間』だったのかもしれません。(その時に考えたたくさんの事が、今でも自分の考え方の基礎みたいにはなってます。)
そして、改めて『次の10年バンドを続けていくための理由』って何なんだろうか?と、はじめて『続けるための理由』を僕は探しました。
『今さらだけど、売れるために本気でがんばってみようよ!』とメンバーに言ってみた事もありました。
正直、あんまりメンバーはピンときていなかったようにも思います。
自分は、曲作りやライブで、いったい何を表現したいんだろうか?
何をお客さんに伝えたいんだろうか?
例えば、自分が書きたい歌詞は先にも書いたみたいに、いつだって『日々の生活』の歌なんですが、でももっとそこから深いところに踏み込めないだろうか?と、だんだん考え出すようになりました。
そんな頃に、僕はライブハウスで働きはじめました。
そこで僕は幸運にも、たくさんの若いバンドに出会いました。
20代後半の僕には、その頃に出会えたたくさんの若い子達と話す内容というのはすごく新鮮でした。
新鮮だったけど、すごく懐かしい話ばかり。
あの頃の自分と同じような事を悩み、あの頃の自分と同じような事で、喜び、泣き、笑いしている若い子達。
『根拠のない自信に満ち溢れてるけど、その反面、実は誰よりも本当は自信がない』そんないつかの自分と話をしているような…。
懐かしい気持ちと新鮮な気持ちを一緒に僕にくれたのが、その頃に出会えて、そして今でも付き合いのある、その若い子達でした。
忘れてはいなかったけど、もうたぶん自分には関係ないんだろうな…なんて思っていた気持ちを思い出させてくれた、たくさんんの出会い。
今、何か歌いたい事があるとすれば、そんな『いつかの自分達』の背中を少しだけ押してあげれるような、『いつかの自分』と一緒に悩んであげれるような、そんな歌を歌いたいなぁ…なんて、自然と思うようになっていました。
そんな時期に出来たのが、今ではあまりライブでやっていませんが『パレット』という曲だったりします。
歌詞に関してだけ言えば、今までボカしてきた表現を一度やめてみました。
今までよりもストレートに自分の考えた事を書いてみたはじめての歌でした。
要は、芸風を変えてみたんです。
だから最初は、すごく恥ずかしかったです。
ちょっと臭すぎないかな?と不安でもありました。
だけどその反面『僕はきっとこんな歌が歌いたかったのかもしれない』『これを表現するために、僕はバンドをやっていたのかもしれない』『これをもっと伝えたい。』と、本当に思えた曲でもありました。
だけど、この曲が出来た時期にメンバーチェンジがありました。
ずっと一緒にやってきた当時のドラマーが辞めました。
バンドを長く続ける事を目標にしてきた僕がそれを一度横に置いて、『これを歌いたい』『これを伝えたい』という目標を持った時にメンバーが辞めました。
正直、それまでは『自分のやりたい事』よりも、『他のメンバーの楽しさを優先』してバンドをやっていた部分もありました。
だから、僕が『これをやりたい!』と、はじめて強く主張した時に、メンバーが変わった…というのは、きっとそういう事なんだと思います。
『続ける事』自体が目標ではなくなってしまったけれど、
まだ、もうちょっとだけ、このバンドを続けていいのなら、僕は『これ』をあなたにむけて歌いたいな…と、はじめて、そんな風に思ったんです。
きっと、僕が『バンドを続ける理由』というのが、おぼろげに見えた瞬間でもありました。
曲のコード進行とメロディにしか興味がなかった僕が、はじめて『音楽で僕は何を成したいのか?』という事を考えはじめたのも、この時だったと思います。
少しだけひねったコード進行で、ポップに切なく”生活によりそうような歌を”歌うそんな事を思いながらやってきたバンドで、何を成したいか?
元々、ライブハウスやライブというものに拘っていたわけでもありません。
そもそも、ライブハウスがあまり好きではない…ところからスタートしている自分なので、僕が一番嬉しい瞬間というのは、曲そのものが評価される事だったりします。これは今でも変わっていません。
知らない誰かのiPodから流れるThe denkibranの曲が、その誰かの生活のBGMになっているのなら、僕はそういうのにいちいちドキドキしてしまう。自分の作った曲が、聴いて欲しい人にしかるべきタイミングで聴いてもらえる事。
やっぱり、それが一番嬉しいなぁ…なんて今でもやっぱり思います。
じゃ、僕らのライブというのは、その知らない誰かがたまに『答え合わせ』をしにくる場所なんだろうな…と思ったりしています。
要は聴いてくれる人の毎日の後ろで流れてる、サウンドトラックみたいにバンドに僕はなりたいんです。
『いつかの自分みたいな”あなた”の生活のサウンドトラック”にThe denkibranはなりたい』
これが、たぶん5年前ぐらいに一度出した僕の答えでした。
ふとした瞬間にThe denkibranの曲が、あなたの生活のバックで流れていて、生活の一部になれてるのなら素敵。
女の子にふられた時に、ルート26を聴きながら自転車立ちこぎしてる中学生
ちょっと青臭くて感傷的になってしまったような夜に、センチメンタル・ギター・ラプソティなんかを聴きながら「うおーーー!!」って思ってくれたら
別に僕の作る歌は、応援ソングではないです。
聴いた人の背中を押すような曲ではないけど、そこで一緒に”あなた”と悩んで考えてあげられる音楽だと僕は思ってます。それが、たぶん音楽からにじみ出る『僕らしさ』。
だから例えば、twitterのTLで『iPodからThe denkibranの曲が…』みたいなつぶやきを見ると、僕はすごく嬉しいわけなんです。表面的な人気や動員よりも、そういうのがすごく嬉しい。
そんな事を思いながら、マイペースに続けてきた、この5年間ぐらいだったと思います。
ただ、あの頃と少しだけ環境も変わりました。
ありがたい事に、たくさんの周りの人に恵まれ、新しい出会いもたくさんあり、自分も少しだけ成長できた気がします。
だから、あの頃に気づけなかった事にも少しだけ気づけるようになり、考え方も少しだけ変わりました。
今回、書いた事は『5年前に思った事』と『今思っている事』が、ちょうど半分ずつぐらい。
じゃ、今はどう思っているのか?っていう話を次回に書いて、そろそろまとめようかと思います。
次回は今度こそ最終回。
毎回だらだら長いだけの文を読んでくれている人、本当にありがとうございます。
倉坂
久しぶりに本気の自主企画イベントをナードマグネットとcraft rhythm templeと4/4(土)にやる事になりまして、それの準備に追われていました。3会場のサーキットイベントです!遊びに来てくれよ!詳細はこちら→ http://misoji2015.pst.jp.net/