ちょっと間があいてしまいましたが前回の続き
「続ける理由」という事のは、つまり「何を目的にしているか?」だと思います。
では「バンドをやる目的」とはなんでしょうか?
最初は「楽しい」が目的で良いと思うんです。
何事も楽しいは絶対に基本。
ただ、「続ける」ためには「楽しい」だけでは無理な事も出てきたりします。
(とは言え、色々な道を経て、また最後は「楽しい」に帰ってこれるのが理想なんですが)
理由がないのに、がんばり続けられるほど、人はきっとタフではない。
だからきっと、続けていくための理由っていうのがいると思うんです。
バンドを「続けていきながら」その「続けていくための理由」が見つかればいいな…というお話を書いてみようかな…と、筆をとったものの脱線して、今にいたります(笑)。
さて。
若い子がバンドをはじめると、だいたいの場合は「ライブハウスに出演しよう!」となり、ライブハウスでのライブを中心軸において活動をはじめる子が多いです。
そうなるとだいたいの場合、ライブハウスのスタッフさんがイベント終了後にバンドに対してのアドバイスをくれる事が多いです。
演奏、もっと上手なろう
ステージをもっと◯◯してみたら?
こんな曲があればいいね
こんな感じに活動したら良いと思うよ?
駄目出し
ほめ殺し
などなど
アドバイスの種類は出演するライブハウス、もっと言えばその日のイベントの担当者によってそれぞれ。
実はなのですが、僕は若い頃、特にバンド活動をはじめた初期の頃は、この『アドバイスを聞く時間』が嫌いでした。
なぜかと言うと、そのいただいたアドバイスが自分的にはいつも見当はずれだったからです。
当時の感想としては「え?俺らのバンドのライブ本当に見てた?何を言ってるの?」というものばかりでした。
お決まりのアドバイスとしては、
「キメをもっとタイトにあわせていこうよ」
「もっと伝えられる。もっと伝えていこう!」
とか。
ひどい時は、ライブも見てないのに「デンキブラン、化けましたね!」とか言われた事もありました。
そもそも当時の曲は、あわせていくようなタイトなキメなんかなかったしな(笑)。
もっと「伝えられる」とか言われても、当時の僕の書いていた歌詞なんてメッセージ性は0。
むしろ、歌詞に関してはメッセージ性を排除したくて、ダジャレに近いような言葉遊びだけの曲だってありました。
「こいつは、本当に俺達のバンドの何を聞いて、このアドバイスをしてくるんだろうか?」
もう、とにかくずっと疑問でした。
当時の僕らのバンドがやりたかった事は
●ポップではあるけど、邦楽的なキャッチーさはなるべく排除した曲
●コード進行もパッと聞きは普通に聞こえてもベタなものは避けて、なるべくビートルズ的な一捻りある曲
●展開、サビはあえて作らずに日本語ではあるけど、洋楽的な曲展開
●メッセージ性はなるべく排除しつつの言葉遊び、または日々の普通を歌う
●オールドロック的なアレンジと多少のセッション感
という感じでした。
メッセージ性のかけらもない曲を演奏してるバンドに「もっと伝えられる」と?
どう考えても納得できなかったのを覚えています。
当時、僕が欲しかったアドバイスは、もっと曲に対してやライブそのものに対しての具体的な事でした。
そんな精神論や一般論はいらないぞ。と。
もっと、つっこんだ音楽的な事を聞きたかったのに、誰も言ってくれなかったわけです。
結局、僕が欲しかったアドバイスを一回ももらえる事もなく、その頃は「ライブハウスというのは、こんな感じなんだな…」と、ある種あきらめていました。
たまに、レーベル、レコード会社の新人発掘の人がアドバイスをくれるような機会もありました。
実はそういう時、けっこう期待したりしてたんです。
ライブハウスではまともなアドバイスはもらえなかったけど、レコード会社の人ならまともなアドバイスをもらえるんじゃないかな?と。
だけど結果は同じ。
事もあろうか「キメをもっとタイトにあわせて」みたいな、今までされていた事と同じような事を言われたりもしました。
これには愕然としました。
「あ、一緒なんだ。」
自分的には、そんな業界人さんよりも、友達だったり、お客さんだったり…という、いわゆる素人さんのアドバイスの方が的を射ていた事が多かったんです。
なんか、今日の3曲目おかしくなかった?
とか
2曲のサビだけなんか変な感じだったよね?
という、普通の感想の方が、よっぽど信用できるやん?と思ってました。
よくよく考えたら業界人さんとはいえ、自分よりもあきらかに音楽を聴いていない人間に、音楽的なアドバイスを期待していた自分がおかしいんだろうな…と、当時は完全にあきらめモードになってしまっていた気がします。
後になって「たまたま、そういう音楽知識の少ない人に当たってただけ…」というのも知りましたが。(音楽業界で働いてる方で仕事のできる方というのは、やっぱりめちゃくちゃ詳しいです。)
そして、その何年か後には、尊敬すべきライブハウスの人とたくさん僕も出会うんですがね。
そんなライブハウスの方達はやっぱり今でも尊敬していたりします。
さてさて。
それからさらに時は流れて、自分も気がついたらライブハウスの人になってしまい、アドバイスをする方の人間になってしまいました。
だから、あの頃にされた「自分的に見当はずれなアドバイス」を若い子にはなるべくしないように、なるべく言葉を選んで、今は若いバンドに接しているつもりです。
ただ、大人になったから…と言うとちょっと違うかもですが、それなりに経験を積んで、あの時は「見当はずれ」と思っていたアドバイス達の意味が、今さらなんとなくわかるようにもなってきました。
いや「わかる」というより、もしかしたら、こういう事を伝えたかったのかな?と考える事も多くなってきました。
当時、例えば僕がレコード会社の人なんかに期待していたアドバイスと言うのは重複しちゃいますが、
君がやりたいような感じの曲をやるんなら…
●例えば、ギターをこんな音色にしてみたら?
●リズムのアクセントの位置を変えてみたら?
●コード進行を例えば、こんなかんじにしてみたら?
というぐらい、つっこんだ音楽の事でした。
今、思い返すと「君がやりたいような曲をやるんなら」という部分が根本的に、レコード会社の人、ライブハウスの人に伝わってなかったのかな?と思います。
そもそも「君がやりたい曲」というのがわかってもらえてなかった。
「見当はずれなアドバイス」に対しての違和感というのは、つまり「他のバンドと自分達が一緒にされてた事」に対しての違和感だったんですよね。
「他のバンド」と「僕ら」はあきらかに違う事をしているのに、「他のバンド」に対してと同じようなアドバイスしかしてこない人間に対しての違和感。
ライブハウスやレコード会社、レーベル…と音楽に関わってる仕事をしてるくせに、なんで自分の耳で聞いて、きちんと僕らの事を判断してくれないの?という違和感。
ただ、今思うと他のバンドと一緒くたにされていた…というのは、つまり「自分のバンドだけの良さ」をわかってもらえていなかった…って事なんだと思います。
それはつまり、極端な書き方をすると、自分達が「馬鹿でもわかるぐらい、わかりやすく自分達のやりたい事を表現できていかなった」って事だったんだろうな…と今なら思ったりもします。
正直、今でもあの頃の圧倒的な違和感は、圧倒的な違和感のままなんですが、それはそれで置いておいて。
なんと言うか。
あの頃の自分って聴いてくれる人に対して、単純に期待し過ぎていたんでしょうね…。
「わかってくれるはず」と。
リスナーに対しての過度の期待。
聴いてくれる人に、多くを求め過ぎていたかも。
極端に書けば「こんな風にやっているんだから、これを聞いたらわかるよね?」と上から目線でバンドをやっていたのかもしれません。
そんな事を思い返してふと思うこと。
いや、ちょっと待てよ。と。
今、僕も若い子に、似たような事をよく言うな…と。
「もっと君の良さをお客さんに”伝えられる”と思うよ?」
「もっと君の良さを表現できたら、曲のかっこよさが”伝わる”と思う!」とか。
あ、なるほど。
あの頃言われていた「伝える」って、そういう事だったんだ…、と今さら気づいてみたり。
ちなみに僕が若い頃って「メッセージ性のあるものがちょっとかっこ悪い」…そんな風潮があった時期もありました。
そんなメッセージ性のある歌詞はちょっと古臭いからダサい…みたいな。
なので、自分のやりたい事から頑なにメッセージ性を排除していた時期でもありました。
その頃っていうのは、内容のない言葉で歌を歌うのに必死だった時期とでもいいましょうか…。
自分的に「伝える」という言葉が「伝える=歌詞のメッセージ性」と頭が固くなっていて、「伝える」という言葉に過敏になっていたんだと思います。
今思うと歌詞以外でも
●楽しそうな雰囲気を伝える
●ギターの良い音を伝える
●メンバーの持ってるリズムを伝える
色々な「伝える」があったのに、そのあたりを考える前に、「伝える」の一言で、完全に思考停止になってたんだろうな…と、反省であります。
今思うと若かった。うん。
要は、自分達のやりたい事もきちんと出来てもいない、わかってもらおうともしてない癖に「なんで、アンタ達はわかってくれないの?」とスネてしまってたのかもしれませんね。
「わかってくれない」じゃなくて、初見の人にも「わかってもらえるぐらい、わかりやすく」自分達を表現できていなかったわけです。
「いやいや!わかりにくい難解な音楽を俺たちはやりたいんだ!」
そんな人もいるかもしれません。
それなら「わかりにくくて、難解な事をやっている」というのを、わかりやすく表現しないと駄目なんだと思います。
じゃないと中途半端な印象になってしまう。
そんな感じでしょうか。
特に若いバンドさんには「とりあえず伝えたい事(表現したい事)を一つにしぼれ!」と偉そうに言う事が多いです。
例えば、みんな色んな音楽を聞いていると思います。
なので、一つのジャンル、側面だけで判断されるのはみんな嫌だと思います。
「はいはい。あのメタル好きそうなバンドね?」みたいに言われると、「いや、俺はメタルも好きだけど、他の音楽も聞くんだ!」 …と声を大にして言いたい気持ちを持つ人は多いかと思いますが、そこはグッとこらえて。
経験上、お客さんが30分のライブを見て、持って帰れるそのバンドの印象って多くて2~3。
「かっこよくて」「優しくて」「面白くて」「演奏も上手くて」…と、あまり多くの要素を詰め込んでしまうと、見ているお客さん的にわけがわからなくなってしまう。
なので欲張らずに、最初は一つにしぼって「何をしたいバンドなのか?」というのを、わかりやすくお客さんに提示するというのは、特に活動初期段階のバンドさんには大事かな、と。
一言で「僕達は○○なバンドです!」と言い切ってしまえる感じ。
そうすれば「見当はずれなアドバイス」というのはなくなってくると思います。
僕らのするアドバイスも、その「なりたいバンド像」にそえるので「何をしたいか?」が定まってくれるとアドバイスする方も、アドバイスしやすいしね。
「僕らはとにかくお客さんを踊らしたいんです!」と言われると
じゃ、リズムもっと安定させようよ?
じゃ、あおり方下手すぎない?
今のライブだと、メロディを聞かす感じのライブになってるよ?
とか。
そこでそのアドバイスをくれた人と意見があわなければ、それはもう趣味や考え方が違うので、仕方ない。そこはあきらめましょう(笑)。
バンドの表現したい事が定まると、とりあえずは一方的にもらうアドバイスではなく、きちんと話し合いになると思うんです。
「僕らのバンドは、~なバンドで、こういう事をやりたい、お客さんに伝えたいです。」
はじめたてのバンドさんでは、なかなか難しいかもですが、それをまず一つ見つけるのが本当の意味でのバンド活動、音楽活動の第一歩なのかな?と思います。
そんな、見つかった「伝えたい/表現したい事」というのが、将来的には僕らがバンドを続けていく理由になっていくんだと今なら思います。
最初は人真似でも良いんです。
誰かに似ていて良いと思います。
トライ&エラーで、繰り返し、繰り返し。
自分らしさなら、後からきっとついてくると思うので。
まずは一生懸命考える事がきっと大事。
何を伝えたいか?
言葉にすると、とんでもなく青臭いですが、それが一番大事じゃないかな?と。
と、今回は殺人的に長くなってしまったので、この辺りで。
またまた次回へ続く。
倉坂
続 僕らがバンドを続ける理由 その2
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