twitterで少し話題になっていたblog記事「動員の少ないバンドはライブするのを止めてもらえないだろうか」に対する感想と意見を少しだけ書いてみようかと思います。
動員の少ないバンドはライブするのを止めてもらえないだろうか
謝罪と反論(動員がないならライブ止めろ記事について)
スルーしようかと思ったのですが、twitterにちょっと感想を思いつきで書いてみたら、思いのほか色々と考えてた事があふれ出てしまいまして(笑)。
今さらな感じもありますが、興味のある方はお付き合いください。
まず前提として
- 僕のblogの内容自体の感想は「そのとおりだと思う!」という賛同と、「いやいや、それは違うでしょ?」という反論とが半分ずつぐらい。
- 書いてる内容は100%は賛同できないにしても、別にここまで叩かれるほど酷い事を書いてるとは思っていないこと。
- これから僕が書く内容は、blog主である海保さんの人間性だったりを攻撃するような目的ではない(多少、文章の揚げ足とりみたいになっちゃうかもしれないので、そこは誤解しないでもらえたら嬉しいです)
で、すでに色々な意見をblogに書いてる方がいるので、他の方とは違う切り口で書いてみたいと思います。
読後にあった違和感
僕はknaveに出演してくれてるバンドの子に、このblogを教えてもらって、ちょっと遅れて読んだんですね。内容自体は、さして新しいとこもなく「音楽業界が不況~CDが売れない」と言われだしてからみんなが言ってるような内容と、これまた昔からある「ライブハウスのノルマ」についての話を混ぜたみたいな内容でした。
海保さん自身もたぶん新しい事を書いてるつもりもなく、普段から彼が考えてることをまとめただけだと思います。
要は
お客さんも呼べない状態でライブハウスの言いなりになって、ライブばっかりしてても仕方ないですよ?
色々な活動の仕方があるだから、もっと考えて活動したほうがいいですよ?
というような内容をバンドに啓蒙したかったというのが、このblogの目的だと思います。
それに関しては本当にそのとおりだと思います。
うん、そのとおり。
そのとおり。
そのとおりなんだけど。
なんだけど。
なんだけど。
なんだけど。
なんだ?この読後の圧倒的な違和感は?
「書いてることや伝えたいことは間違ってないと思うんだけど、なんか釈然としないんだよなぁ~」これが僕の正直な感想。
僕と似たような、こんな気持ちを持った人も僕の周りには多そうなので、その人向けにその違和感の正体について、僕なりに思った事をまずは書いてみようかと思います。
僕なりに思った違和感の正体
まず、blogの目的というのがアマチュア、インディーズと呼ばれるスタイルで活動しているバンドマン/ミュージシャンに対する啓蒙
だと思います。
なので、あのblogというのは基本的に、ミュージシャンに向けて発信してるblog だと思うんです。
で、誰かに何かを言葉や文字にして伝えたい時は、
- 思いを一生懸命に訴えるパターン
- 筋道をきっちり説明するパターン
今回の海保さんのblogというのは、後者に近いと思います。
きちっりと理論的に説明するパターンの文章。
実際にライブハウスで働いてる僕のような人間からしたら、もちろんツッコミどころもある内容ではありました。
ただ、話も整理されてますし、読んでみて参考になったミュージシャンも多いかとは思います。
「釈然としないんだよなぁ~」と思った僕みたいな人間がもった違和感というのは、その「ツッコミどころ」に対しての違和感ではない気がするんです。
僕が持った違和感の元というのは、海保さんが
「ミュージシャンに対して効率よく考えを伝えるために彼が作ったストーリー」に対しての違和感
だと思うんですよ。
僕が読んでみて、話の外枠を超大雑把にまとめると
ライブハウスという悪のトライブがあって、そこに騙されてる可愛そうなミュージシャン達よ、早くそれに気づけ!!
という風に読めてしまうとこが問題だと思うんです。
実際には、そこまでの悪意はないと思いますが、そういう風に読めてしまった人もいると思うんですね。
物語の前提が、ライブハウス=悪 なんですね。
そりゃ、僕みたいなライブハウスで働いてる人間からすれば、正直、良い気はしないですよね。
「いやいや、良いライブハウスもある」とblogには書いてるじゃないですか?という、ツッコミもありそうですが、話の前提がライブハウスの大半が悪なんで、そのなかに少しだけいる良いライブハウスというのがこの物語ではイレギュラーなんですよ。
超唐突な例え話を書きます。
この世には、人間と悪魔族 という二種類の種族がいます。
人間と悪魔族は基本的に対立しています。
悪魔族は基本的に悪者なんですが、中には人間の心を持ったまま悪魔になってしまった、良い心の悪魔族もいます。
良い心の悪魔族は数はほんの少数です。
良い心の悪魔族は「人間と悪魔は仲良くなれないものか?」と悩んでいます。
それを知らない人間達は、早く悪魔を根絶やしにしなければ!と今日も戦いつづけています。
どっかで読んだことあるようなデビルマンみたいな話だな…というのは置いておいて(笑)、
悪魔族=ライブハウス
人間=ミュージシャン
とすれば、これがそのまんま当てはまる気がするんですね。
良識のある悪魔族の僕みたいな人間からすると(笑)、「いやいや!!そこまで僕達は悪なのか!?」と思ってしまうわけです(自分は良識のある良い悪魔族と信じたいですが…)
なので、今回の記事を読んで「内容自体は納得できるんだけど、なんか違和感あるんだよなぁ~」と思った方は、たぶん「悪魔族より」の派閥だと思うんです。
全員が悪いわけではないのに、断定的な書き方で僕達のトライブが絶対悪みたいにされてるよなぁ~…と。
で、さらにライブハウスのスタッフ以外で、この記事に違和感を持った方というのは、
既存のライブハウスシーンに深く関わって、楽しんだり、現場の苦労をわかってくれてる人達だと思うんですね。
既存のライブハウスシーンに深く関わってるお客さん
既存のライブハウスシーンに深く関わってるイベンターさん
既存のライブハウスシーンに深く関わってるDJさん
既存のライブハウスシーンに深く関わってるライターさん
既存のライブハウスシーンに深く関わってるミュージシャン
さっきの例え話でいう、人間なのに悪魔族よりの人だったり、悪魔族との和平をなんとか実現させようとがんばってるような人達。
そんな人達も意外に多かったわけです。
言い方悪いですが金にもならないのに、僕らだってバンド達と朝まで、ああでもない、こうでもない…と話あったりしてるわけで、そういう誠意が伝わってるバンドもけっこう多いんだよと、再確認できたような気もしました。
ただ、そもそも既存のライブハウスシーンが駄目だから、こんな事になってるんだよ!という事を伝えたいblogではあるので、そういう類の人にヤイヤイ言われ出すと「これから旧派閥は…!だから現状が変わらないんだよ!」的に海保さんは思われるかと思うし、そこに対してはあながち間違いではないかとも思います。
今回のblog記事のぷち炎上で、海保さん自身も言われのない中傷だとか、理論的にも破綻してるような意見もたくさん受けたかとは思います。
無意味にいきなり喧嘩を売ってくるような意見は、絶対に駄目だと思います。
ただ、blogの内容自体が
いきなりライブハウスというトライブ全体に喧嘩を売ってるような内容
に、無意識かとは思うのですがなってしまってるわけです。
少なくても僕にはそう読めてしまいました。
で、大半の人はここまで理屈っぽく考えないで読んでると思うので、僕らみたいな属性の人間には読後に違和感が残るんですね。
でも普通に読んでる人には、その違和感の正体がわからないと思うんですね。
結果、「なんか、ムカつく」とか「なんか、嫌」とか、すごく子供っぽい感想になる人もいる。なんで嫌な気持ちになってるのか、理由がわからない。
海保さんが「blogの内容をきちんと読んでほしい」、「内容の話をしましょう!」と訴えても、そういう内容の話をする以前になっちゃってると思うんです。
さっきの悪魔と人間の例えば話でいうと、
いきなり、人間の学者が「悪魔族をすべて滅ぼしてしまおう!」と言い出した。
人間の中には「いや、良い悪魔族もいるんだから…!」と訴える人もいたが、学者は
「いや、本当に良い悪魔族なら勝手に生き残るから大丈夫」と説明する。
釈然としない一部の人間…
そんな一部の人間からは、その学者は「強硬派のマッドサイエンティスト」にうつる。
そして、学者は「なんで理解してくれないんだ。こんな理論的に説明しているのに…、これが人類の平和のためなのに…」と思い悩む。
みたいな。
反対派の人間からすると、そこにある理論的な説明なんて、どうでも良くなってしまってるわけです。
だから「タイトルだけで判断せずに内容もきちんと読んで!」と訴えられても、たぶん文句言ってる人は内容も読んだうえで文句を言ってると思うんですよね。
海保さんからすれば「これだけきちんと説明してるのに、なんで主題をわかってくれないんだろう?」と思うのも当然。
blogの主題が読み手によっては入れ代わってるんだと思います。
海保さんの主題→ これからの未来のあるバンドへの啓蒙
反対派の人が読み取った主題→ いきなりライブハウスのすべてを悪者にして、喧嘩を売ってきた
極端かもですが、このイメージでお互いがやり取りをしても、ずっと平行線だと思います。
正直、僕が読んで最初に受けた印象というのは、
ライブハウスという業種はまったく企業努力していない仕事で、生き残り合戦もない楽な仕事と思われてるんだな
…という印象がすごく残りました。
そういう事を一番に伝えたいblogでないのは頭ではわかるのですが、一番に印象に残ってしまったものは仕方ない。
いきなり、ディスられた感じ。
個人的には、謝罪と反論と題したその後のblogがなければ、こんなにモヤモヤする事はなかったのですが、あのblogを読んでモヤモヤが加速してしまいました。
正直、海保さんは今回の件で謝る必要はなかったと思うんです。
でも、そこで謝罪という言葉を使ってるわりに、誰に対して何を謝ってるのか?がよくわからない内容だったのと、
ぼくは本気で音楽業界を良くしたいと思い、日々努力を続けている。
毎日少なくとも8時間は音楽業界のことを考えている。
という、最後の一文のせいで
「え?ライブハウスの人間って、たかだか8時間程度もバンドや音楽業界の事を考えてないと思われてるの!?」と僕は思ってしまった。
「音楽業界」という言葉のせいで
え?けっきょくこれって、ライブハウス界隈の話なの?音楽業界全体を俯瞰でみた話なの?
と、話の焦点が僕的にはボケてしまい、何の話をしてたのかがわからなくなってしまった。
もちろん、ライブハウスの話も、広い意味では音楽業界の話に内包される話ではあるので、ライブハウスシーンの健全化=全体の活性化…という意味なのもわかるのですが。
悪魔を滅ぼそうとしたマッドサイエンティストの話=牛丼屋さんの話
文章のあら探しをしたようなだけの内容になってしまって海保さんには申し訳ないのですが。ちょっとだけblogの内容のほうにもふれたいと思います。
要約すると
バンドがライブハウスを選んでいけば、たくさんのライブハウスが潰れていって、良いライブハウスが残る
的な部分。
僕はライブハウスの人間なので、そこに関しては
ライブハウスの数が減ったら仕事は楽になりそうだなぁ~という悪魔の囁きと、いやいや!みんながんばってライブハウスやってるのにそんな事を思っちゃ駄目!という天使の囁きで毎日ゆれてるのですが(笑)
仮説どおりに、ライブハウスがたくさん潰れて、2~3個のライブハウスが残ったとして…、今より状況がよくなるか!?と僕なんかは疑問に思ったりはします。
また、唐突に例え話でいきます。
次は町の牛丼屋さんに例えます。
吉野家、すき屋、松屋…、牛丼のチェーン店がたくさんあります。
ある時、誰かが言いました。
「本当の牛丼屋さんはひとつで良い!」
その日から、見るも無残な牛丼屋さん生き残り合戦がはじまったのです。
他のチェーン店が牛丼並みの値段を極端に下げているので、どの店舗もこれ以上は値段を下げることはできません。
でも、あるチェーン店が、牛丼並みの値段を100円に設定しました。
大英断です。
それをかわきりに、どのチェーン店も一斉に牛丼並みを100円で売り始めました。
牛丼屋さんの利益を度外視した値下げ合戦がはじまりました。
数年後、あれだけたくさんあった牛丼屋さんのチェーン店は軒並み撤退。
ひとつだけ、牛丼屋さんのチェーン店が残りました。
牛丼戦争は終結したのです。
そして、ひとつだけ生き残ってライバルがいなくなった牛丼チェーン店は…
さて、牛丼屋さんは次に何をすると思います??
僕が思うに、たぶんなんですけど
値上げすると思います。
ライバルがいなくなって、誰にも気を使わなくてよくなったから。僕が社長なら、もう即効で値上げするね。
もちろん、早かろう良かろう で牛丼を提供しなくて良くなったので、接客や商品のクオリティ自体は上がるかもしれませんが、最終的にはみんなが思ってた方向には進まない気がするんですね。
ライブハウスも周りが潰れても、残ったところは極端な話だと、何かしらの要素はこんな感じの流れになっちゃうんじゃないだろうかな?と思うわけです。
理想のライブハウスってなんだけ!?みたいな。
じゃ、どうしたら良いの?という話なんですが、牛丼から撤退して他のどんぶりものをメインに攻めた、なか卵 みたいなやり方が正解なんじゃないかな?と。(実際に なか卵の売り上げとか知りませんのでたとえ話です)
で、外には見えない部分かもしれませんが、どのライブハウスも他との差別化に関してはがんばってると思います。
牛丼以外で何を売ったら、お客さんに喜んでもらえるかなぁ??と。
さすがに長くなってきたので、具体的な話はまたの機会に書けましたら。
まとめ
というわけで、長々とお付き合いありがとうございました。海保さんに対して、失礼な表現もあったかとは思いますがお許しを。
海保さんの事は、以前から色々とされてる方なのでネット経由で一方的にではありますが存じあげておりました。
なんやかんや言ってても、動いたり発言してる人が正義だと個人的には思っております。
何かしら動いてる人の発信してるものに対して、こういう形で長ったらしく文章を書くことは珍しいのですが…。
今回は色々と読んでて、モヤモヤしてしまいまして。
そういう意味では、このblogが文章の揚げ足どりがメインみたいにはなって失礼な形にはなってしまいすんません。
あのblogを読んで「なんとなく嫌!」と思ってしまった人は、たぶん僕が書いたような事が原因だと思うので、その辺りバイアスをかけずにフラットにあのblogを読んでみて意見交換できたら素敵だなぁ…と思いました。
けっきょく、内容自体に対する僕の意見とかの話はあんまり書けてないので、その辺りは需要がありましたら、また次の機会に。
ちなみに、僕の働いてるライブハウスはチケットノルマがありません。
ノルマがないのはないで、ライブハウスもバンドも実は大変だったりしますよ?という話も、これまた機会がありましたら。
失礼しやした。
バンドとライブハウスの話を童話風に書いた以前の記事もよろしければ。