聴いた事のないもの(自分が知らないもの)なんて、演奏で再現できるはずないやん。っていうお話
昨日の記事に関わらず、上手くなるためには「まず、上手い人の演奏を聴きましょう」ということを最近はよく書いてます。まずは知れ。
そして考えるのだ。
そもそも”上手い”ってどういう事だ?
生演奏で体験するのも大事ですが、もちろんCDやレコードで体験するのも大事
という番外編的なお話です。
まず自分の経験談を書きます
僕のルーツ。一番好きな音楽のジャンルというのは、わかりやすく書きますと
60年代のイギリスのロックです。
一番、有名なのはTHE BEATLESになるんでしょうか。他にも有名どころだと、The WHO や small faces なんてバンドも大好きです。
曲調としてはR&Bがベースにありつつも、後に70年代以降に”ハードロック”と呼ばれるジャンルの原型になるようなバンド達が好き。
ストレートに書くとロックバンドが好きです。
↑こういう感じの音が好き。ちなみにこれは今も現役の The WHO というバンド
ここから本題。リズムの話です。
僕の十代後半~二十歳頃の話です。洋邦年代問わず、色々なジャンルの音楽はもちろん聴いていました。
でも、特に一生懸命十代の頃に聴いていたり、ギターを練習していたジャンルというのは主にロックバンドが中心でした。
一生懸命に聴いたり、練習していたジャンルがロックだけだったので、当時は自分の血や肉になっていたリズムのベーシックが完全にロックバンドのリズムでした。
特に、上にも書いたとおりのイギリスの60年代のバンドが好きになっていってからは、そういうバンドのリズムの雰囲気が自分の中ではいつの間にスタンダードなリズム感になっていきました。
リズムのニュアンスの話なので、曖昧な書き方にはなってしまうのですが
ガシャガシャした直線的な8ビート
とでも言いましょうか。(リズムパターンというよりも、ニュアンスの話なので書き方が難しいのですが)
黒人さんが演奏するようなしなやかリズム というよりは ちょっとドカドカしてガサツな感じのリズム。
それが僕の体に染み付いたリズム感であり、好きなリズムの雰囲気でした。
当時は自分がバンドで演奏するうえでも、常にそのリズムの”ノリのイメージ”がありました。
だから、そのイメージしてる物と違うリズムの感じをメンバーにぶつけられると「う~ん…なんか違うんだよなぁ…」と思いながら演奏してました。
当時は、こんな風に言葉には出来てはいませんでしたが。
体に染み付いてないリズムの感じをぶつけられた時の違和感。
要は、対応できてなかったんですね。
黒人音楽
20歳頃から、いわゆる黒人音楽と呼ばれるようなジャンルも自然と聴くようになっていきます。
一番最初にブラックミュージックで”本当に好き!”となったのが、20歳頃にはじめて聴いた、このDonny Hathaway という人。
ネオソウルなんて呼ばれてる70年代のソウルシンガーさんです。
そうなると今までなんとなく聴いていた Stevie Wonder の偉大さがわかってきたりもしました。
僕の周りはどっちかというと、JAMES BROWNみたいなドファンクが好きな人が多かったのですが、僕はやっぱりポップな人なので、ポップな歌ものから黒人さんの音楽にも入った…という感じでした。
ちなみに、そのDonny Hathawayさんと一緒になぜか好きになったのが、Herbie Hancockのヘッドハンターズというアルバム
余談ですが、この曲をこの前 Kidori Kidoriを見に行った時に、音出しで彼らがやっていたのでテンションが上がりました(笑)
黒人さんの上手さ、リズムの良さ
なんとなく黒人さんはリズムが良い!みたいなイメージありませんか?
僕はありました。
黒人音楽…R&B、ソウル、ファンクなどなど…
それは、あまり自分に馴染みがなくて、”なんだかオシャレっぽい”だけの一言で片付けていた聴かず嫌いのジャンルではありました。
でも、ふとしたきっかけで好きになって聴きこんでみると、これがなかなか楽しい。
あの苦手だったしなやかなリズムがすごく気持ちよく聴こえてきたりしました。
根本的にロックバンドのリズムの出し方、リズムのうねり方とは何か違う気がするぞ?と、やっぱりわからないなりに気がつくわけです。
16ビートだったり、ちょっとハネたリズム を演奏するにしても、ロックのそれとはなんだか違う。
“このリズムの感じが気持ちいいんだな…”と。
僕はこれをよく言われる白人と黒人のリズム感の違いとは思いません。
思いませんが、ジャンルによって、ここまで曲の持っているリズムの雰囲気が違う~という事を体験するわけです。
なんとなく頭では分かっていた事を、CDやレコードを聴き込むことにより身を持って体験したわけですね。
まぁ、僕がソウルとかファンクなんていうジャンルを、本当に上手く演奏できるわけではないのですが、少なくても体験して認識した事により
そこに近づけようと努力は出来るわけです。
これはつまり正解のお手本を知ったので、そこに近づけるように演奏することはできる
という事でしょうか。結局、下手くそでも勢いのあるロックな演奏が好きだった
いわゆる上手い演奏を知った事により、元から好きだったジャンルを俯瞰で見れるようにもなりました。ソウルやファンクの上手い演奏を知った事によって「ああ、僕が過去に好きだったものは”ちょっと下手くそなぐらいの演奏”だったんだな…」と、はじめてわかりました。
これは、いわゆる”上手い演奏”と比べてみて、はじめてわかったこと。
“ちょっと下手な勢いのある演奏”だけを聴いていたら、それだけが世界のすべてなので、こんな風に冷静に見れる事はなかったと思います。
ってなわけで聴き比べ
僕の好きな昔のイギリスのバンドというのは、基本的にブラックミュージックに憧れてバンドをはじめた人が多いんですね。
なので自分達の好きな黒人さんの曲のカヴァーもよく演奏します。
ただ、どのバンドも特に若い頃にそういう曲を演奏してたものに関しては、オリジナルのいわゆる”リズムのノリ”というヤツはあまり出せていません(笑 その出ていない感じがカッコ良かったりはるすのですが)
では、そんな勢いのある白人ロックヴァージョンとしなやかな黒人グルーヴィヴァージョンを聞き比べてみましょう。
こういう比較ってYouTubeがあるから便利ですよね。
You really got a hold on me
まずはオリジナルのSmokey Robinson & The Miraclesダンスもかろやかです。
The Beatles
良い線いってます。良い感じです。が、オリジナルの持ってる軽よかな雰囲気はない気がします。やっぱりロックバンドのそれだな…と。
リズムのノリうんぬんよりも、誰の曲をやってもビートルズになる…という別のすごさを感じます。
small faces
もう、このスモールフェイセスVer 大好きなんです。歌がエモいです。デビュー当時の和田アキ子も真っ青なエモさです。大好きです。本当に大好きなんですが別曲というか…。やっぱりロックバンドのそれですよね。
続きまして Move On Up
こちらはオリジナルのCurtis Mayfield。グルーヴィです。これをThe Jamがカヴァー
かっこいい!かっこよくて大好きだけど…どこか熱さだけで押しきってる感じというか。リズムのしなやかな感じはないですよね(笑)。やっぱり、これはロックバンドのそれだと思います。パンクバンドとしてはじまったJAMのある意味でファンキーさんの限界…という言い方もできるかもしれません。
Jealous Guy
では、白人のロックの曲を黒人がカヴァーするという逆パターンもいってみましょう。John Lennon のこちらはオリジナル
それを Donny Hathaway がカヴァーしてるヴァージョン
黒人さんのノリで演奏するとこんな感じになるのか!?という例ですね。もちろん、オリジナリティを出そうと意識してやっているかもですが、リズム的には別物。しなやか。
と、まぁ、こういう感じです。
これは、どっちが良い、どっちが優れているか みたいな話ではありません。
ロック少年だった僕は、当時この黒人さんのリズムのノリの雰囲気をまったく知らなかったのです。
なので、この雰囲気で黒人っぽく演奏しようにもお手本がわかってなかったのです。
知らないものは演奏できない。
いや、厳密に言うとこんな風に演奏できるかどうかは置いておいて、前提として知っていないと、練習したり、近づける努力もできないわけです。
やっぱりお手本をわかっていないと。
そしてこんな風に、色々なタイプのジャンルのリズム、バンドのリズムのあわせ方、リズムの出し方を聴きこんで知った事によって、初めて自信を持って僕も言えるわけです。
色々と知ったうえで僕は
ちょっと下手でも勢いのある感じのロックなノリがやっぱり好きだ。
って。まずは、知らないとね。
下手くそな演奏ばかり聴いてたら、そりゃ下手な演奏しかできないよ。
ってなお話でした。色々と聴こうぜ。
※ビートルズが下手くそだ…とか、そういう話ではないので誤解のないように。
コップを逆さまにしてそこにノミを入れる。ノミはコップの中で跳美続けるのですが、コップの天井に頭を打ち続ける。その後、コップを外しても、もうその頭を打った高さまでしか、ノミはジャンプしなくなるんだそうな。もっと高く跳べるはずなのに。特にプレイヤー、バンド志向の若い子には「自分はこのジャンルだけ!」なんて決め付けないで、色んな音楽を聴いて欲しいな…と思います。後々、高く跳ぶために。
今回はかなり趣味的に偏った感じになってしまったので、需要なさそうですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
とは言え、色んなジャンルを知りすぎてないからこその誤解から生まれるカッコ良さもロックバンドにはあるので難しいところもあるんですがね。
例えば、パンクバンドがファンクをやろうとしたら、こんな事になっちゃた…ていう
The Pop Group
一口にファンクと言っても色んなファンクがあるのですが、ファンクでなんとなく思いついたKool & The Gangの動画を
この二つは全然違いますよね(笑)
全然違うけど、どっちもかっこいいので正解。
技術や知識が少し足りないゆえの稚拙なコピーが、新しいカッコ良さを産む…というのもロックにはよくある話なので、頭でっかちになりすぎない良いバランスが大事なんでしょうけどね。
この手のミクスチャー的な歪なカッコ良さの話はまたの機会に。
これ書きながら、ナンバーガールが解散してからの、ZAZEN BOYSの音をはじめて聴いた時に「おぉ!もろにThe Pop Group だなぁ!」なんて思った事も思い出しました。