最近、偉そうにギターの事を若手さんに教える事が多いので、その時に気づいた事をあれこれ
エレキギターはスイッチのON/OFFで音が出る楽器ではないぞ?というお話
右手で、いかに音のニュアンスをつけていくか?というお話ですこのエントリーに書いた事の続きにはなっちゃうのですが
”右手(ピッキング)で音のニュアンスをつけて弾く”という話がそもそも上手く伝わらない件
前提として僕が言う”ギターが上手い”と言うのは
“ピッキングのニュアンスが上手い”というのと“リズム感が良い”のほぼこの二つの話です
で、今回は右手でつけるニュアンスのお話
とは言え、全然難しい話じゃないんですよ。
何より、僕が難しい事できないので。
例えば、ギターでコードストロークをしている場合
「イントロは強めに弾いて、Aメロだけ弱く弾いてみて?サビはイントロよりちょっと弱いぐらいの強さで弾いてみて?」
ぐらいの話なんです。
でもこれが上手く伝わらない。
上手く出来ない。
でも、目の前で「ギターちょっと貸して?」と言って、「こういう事」と実際にやってみせると「あ、なるほど」とすぐにわかってもらえるのですがね。
で、これの原因を考えてみた。
考えてみた。
夜も寝ずに考えてみた(うそ)。
あ。
なるほど。
もしかしたらエレキギターに対する認識の前提が違うのかな?という事に気がつきました。
おい、若手達よ
ギターがアコースティック楽器だという事を思い出せ
これにつきるかなと。え、エレキギターの話してるんじゃないの?
アコースティックギターの話?
何言ってるの?
アコースティックギターってこれでしょ?
とか思いました?
そんな風に思ったあなたに言いましょう
バーカ
ごめんうそ
馬鹿じゃないです。
すいません
ここで閉じずに最後まで読んで
ギターはシンセサイザーじゃないんです
シンセサイザーってわかります?いわゆるキーボード
こういうヤツですね。
鍵盤がついているので見た目がちょっとだけ似てるせいで、ピアノなんかと一緒くたにされがちですが
シンセサイザーの鍵盤というのは基本的にスイッチなんです
そこにある概念は ON と OFF押したら(ONにしたら)音が出て、離したら(OFFにしたら)音が消える
そんな楽器
この感覚に近い感じでギターを弾いてる人が特に初心者さんには多いんじゃないかな?と。
なるほどな。この感覚で弾いてるんなら、弱く弾いてニュアンスをつけてみて とか言われても理解できないよな…と気がつきました。
エレキギターの仕組みを思い出してみよう
- 左手でフレットを押さえて、振動する弦の長さを決める
- その弦を右手でピッキングして弦を振動させる
- その弦の響きがボディやネックに伝わって振動する
- それをギターのボディについているピックアップ(マイク)が拾って電気信号に変換する
- アンプを使ってその電気信号を増幅してスピーカーから鳴らす
エレキギターという呼び名ですが、1~3までは完全にアコースティック楽器の仕組みなんです。電気を使うのは4~から
つまりエレキギターというのは、スイッチを押せば毎回同じ音が鳴って電気で増幅されて大きな音が出る楽器…ではなくて弦の振動を電気で増幅させて大きな音が出る楽器なんです。
この辺りの基本って意外に忘れられてそうだな…などと思いました。
タブ譜文化の悪影響か?
例えば、5弦の3フレットを押さえて弾けば C (ド) の音が鳴ります。
スイッチを押して C (ド) を鳴らす楽器ならこの認識でOKなのですが、
ギターは、その押さえた C (ド) の音をどういうニュアンスで鳴らすか?という楽器です。
タブ譜を見て、なんとなく書いてある数字の通りに弾けば、それっぽく人の曲もフレーズだけはコピーできてしまいます。
そんなタブ譜の数字や記号だけで、初心者のうちになんとなくギターの弾き方を理解してしまう人も多いかもしれません。
最初の入り口としては、それで良いかとは思うのですが、そういう初期段階の認識のまま止まってしまうと、なかなか弱く弾いて、そこからニュアンスをつけて!みたいな事がイメージしにくいのかな?とふと思いました。
音のニュアンス
アコースティック楽器と書きましたが、アコースティック楽器というのは面白い物です。弾き手のニュアンスがすごく出ます。
弱く弾けば優しい音になりますし、強く弾けば倍音の多い強い音になります。
つまり
弱く弾く=音が小さくなる
だけではないんです。
弱く鳴らせば、音も小さくなるかもしれませんが音自体のニュアンスが確実に変わります。
声で想像してみてください。
大きい声をだす時、普段ぐらいの声で話す時、小さな声でヒソヒソ話をする時、音量ももちろん変わりますが、声のニュアンスも変わるでしょ?
その感じを出すのが右手のピッキングだと思うんです。
この感じを意識できてるだけで、一気に上手くなったみたいに聴こえますよ。
お試しあれ。
あと原因として考えられるのが
上手い人の生演奏をあまり聴いた事がない
上手くなる近道ってやっぱり上手い生演奏を聴いてパクることだと思うんです。
もうこの前回に書いた記事と内容的には重複しまくりですが…
CDだけだと、なかなか伝わりにくいところ、わかりにくいところがあります。
前記事にも書きましたが、特に最近のロックバンドの音源というのは、コンプレッサーやリミッターというエフェクターが、強めにかけられていてます。
コンプレッサーやリミッターというのは、簡単に書けば音量の大小を均一に整えるエフェクターです。
なぜ、そんなものをかけるのか?というとこれも簡単に書けば、CDで使える限られた音量の中でかっこよく曲やフレーズを聴かせるためです。
コンプレッサーをかけている…という事は、音量を機械的に均一にしてしまっているという事です。
なので、録音の時に例えば
イントロは激しく弾こう。Aメロは歌の感じが優しいから右手のタッチも優しく、サビは激しいから少し強めに弾こう!
などとプレイヤーが考えて弾いたフレーズも、コンプレッサーで音量が均一に揃えられているために、音のニュアンスの違いは出ていても、ずっと同じ音量で鳴り続けている…というCDも少なくありません。
そういうCDをお手本にしてずっと練習、演奏してたわけです。
そりゃ、ずっと右手100%の力で演奏するわな。
だって、ずっと100%で鳴ってる(ように聴こえてる)CDをお手本にしてるんですもの。そりゃそうだ。
誰も悪くない。
教えてくれなかったのだもの。
そりゃ気づかない。
ちょっと前に「こんな感じでAメロだけ弱く弾いたら解決じゃない?」と、某ギタリストにアドバイスをした事があったんです。
その時「あ、弱く弾くのってアリだったんですね!?」と、その人は目から鱗な感じのリアクションをくれたので、逆に驚いた事があります(笑)。
なるほど。
ロック系のCDなんかを真面目に聴いてるがゆえに、ずっとこんな音が出るように強く弾いてないといけない…と思い込んでたわけですね。
ただ残念な事に、ずっと強く弾いててもその音は出ないんすよ。
みたいな話もありました。
あと考えられる影響は
エフェクター マンセー文化
エフェクター楽しいっすよね。男の子のホビー心をくすぐります。
集めて楽し、飾って楽し、繋いで楽し。
僕も大好きっす。
でも、繋いだだけで上手い音が聴こえる魔法の箱 みたいな売り文句には要注意です。
エフェクターは上手く鳴らしてる音にかける調味料です。
何十個も歪みエフェクターを繋いで、踏み分けて音色を変えて…というのも楽しいですが、基本は、右手のタッチとギター本体のボリューム調整です。
スイッチをONにすると音色が変わる
この要素が、上にも書いた エレキギター=ON/OFF で音が出る…的な誤解に繋がってるのかな?とも思ったり。
極端な話だと、この感じですよね。ONにしたら激歪み!みたいな(笑)
いや、このアイデア自体はシンプルだけどすごい発明だし、かっこいいんですが。
ここまで綺麗に クリーントーン→激歪み の切り替わりだと、最初はピアノだけで入って、いきなりオーケストラサウンドに変わる!みたいな…もうアレンジの世界なのでね。
やっぱり技法として極端な例だと思います。
なんでも、ONとOFFだけで切り替わると思ったら大間違いだぜ。
余談ですが、カートコバーンさんはめちゃくちゃ弾いてるイメージがあるかもしれませんが、これだけ激歪みで綺麗に音を出してるとこを見るに、右手でのタッチのコントロールはすごく上手い方だと思われます。
力いっぱい雑に弾いちゃうと、たぶんこの感じにはならないので…
結論
というわけで毎度、同じ話ばかりですが、右手のタッチに気をつける。
これがやっぱり基本かなと思います。
右手だけで出せる、音のニュアンスと音量に気をつけると、一気に上手くなったように聴こえると思いますよ。
例えばですが、普段から7~8割ぐらいの強さで均一に弾けるように練習しておくと、タッチだけで音量も音色もけっこうコントロールできるようになります。
アンプやエフェクターの設定にもよりますが、歪みの量すら右手だけでコントロール出来ます。
ON/OFFで鳴らしてるわけではなく、そこには無限の可能性があるわけです(ちょっと大げさ)
ただ難しいのは”弱く弾いても”、”しっかり鳴らす感じ”といいますか…。
弦を振動させている…という意識を持つ事が大事だと思います。
この辺りは、各自で色々と研究してみてください。
ふまえて、歌うようにギターを弾いてみてください。
まぁ、こんだけ偉そうに書いてて、僕はそこまで上手くは出来ませんがね。
お互いがんばりましょう。
楽しいギターライフを!!
おしまい
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