言わずと知れた、元スパイダース。
ロックレジェンド。
日本で一番最初にFUZZというエフェクターを使った人。
そんな話は他で調べたらいっぱい出てくると思うので、良かったら調べてみてください。
The denkibranとムッシュかまやつさんのエピソードを思い出したので書いてみようかと思います。
ムッシュかまやつ with The denkibran
ちょうど今から10年前の2007年に共演の機会をいただいて、翌年の2008年に話の流れで、ムッシュかまやつさんのバックバンドをやらないか?という話をいただきました。あら、楽しそう。
二つ返事で、OKをしました。
事前に挨拶だけでも…と、イベントの一ヶ月ほど前にお会いした時に「何かやりたい曲ある?」と気さくに聞いてくれた、かまやつさん。
「じゃ、あの曲をやりたいです…」と、恐る恐る口にしたみたところ、満面の笑みで、かまやつさんが一言。
「あ、それ歌詞、覚えられないや。別の曲にしよう」
というわけで、いつもよくバンド編成のライブでやっているいつもどおりの曲をやる事になりました(笑)。
なんで、聞いたねん(笑)。
おちゃめすぎる。
ライブ前の練習
ライブでやるかもしれない曲(R&Rのカヴァー曲をメインで、かまやつさんの曲も含む約15曲ぐらい)を教えてもらったので、その曲を練習しておいてくれとのこと。スタジオで、かまやつさん抜きのThe denkibranのメンバーで軽く練習だけして、かまやつさんを向かえてスタジオ入り…
と思ってたのですが、どうやら
事前に、我々は かまやつさんと一緒にスタジオで練習は出来ないよう
マジか。練習できないのか。
まぁ、当日になんとかなるだろう…とは思ってましたが。
そしてイベント当日
その日はThe denkibranの主催イベントに、ムッシュかまやつさんがゲストで出演してもらう…という形でした。そこで飛び込んできた最新情報
ムッシュかまやつさんの会場入りは本番直前
え?練習は?一緒に一回も音合わせないで本番?
The denkibranの自主企画イベントなので、The denkibranもライブをする予定だったのですが、この時点で自分たちのライブどころではありません。
マジか。
大丈夫か。
そうこう言ってる間にイベントも終盤。
ムッシュかまやつさん会場入り。
そこでThe denkibranとムッシュかまやつさんの初顔合わせ。
「今日はよろしくお願いします!」
「あ、よろしくねー」
相変わらずの優しい笑顔で受け答えしてくれる、かまやつさん。
「じゃ、後で呼び込むから、よろしくー」
と一言。
ムッシュかまやつさん、マネージャーさんからギターを受け取り、一人でステージへ。
?
状況が把握できないThe denkibranメンバー。
どうやら
前半がムッシュかまやつさんのソロ弾き語りライブ
後半が、The denkibranをバックバンドにつけてのバンド編成ライブ
という構成のようでした。
なるほど。
うん?
いや、なるほど じゃねーよ。
何の曲やるか聞いてないし。
そもそも何分演奏するんだよ。この時点で、タイムテーブルはあってないような状態(笑)。
本番前にスタジオに入れる…って言ってたやん。
The denkibranの状況としては、かまやつさんとやる曲を決めて最終調整したら、なんとかなるかな?と、8割完成ぐらいの状態で置いておいた曲ばかり
3コードのロックンロールの曲が多かったので、まぁ、流れの雰囲気でなんとかなるか…。
いや、本当になんとかなるか!?
正直、超不安なメンバー。
「ゴロワーズ1曲勝負やな」
控え室で、誰かが言った。
ムッシュかまやつさんの曲で「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」という超名曲がありまして。
16のちょっと跳ねた感じの曲調で、当時のThe denkibranのメンバーの得意なリズムの曲でした。
よし、他の曲で失敗しても良いから、ゴロワーズだけはしっかり決めよう!と、メンバーが決意した直後に事件が起きます。
ムッシュかまやつライブがはじまる。
「こんばんは~ムッシュかまやつです」の軽い挨拶のあとムッシュかまやつさんのソロ弾き語りライブがはじまります。
そこで、The denkibranのメンバー驚愕。
1曲目の歌いだし…
「ゴロワーズというタバコを吸ったことがあるかい♪」
聞き覚えのあるフレーズ
おい。
1曲目から「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」やりやがった!
え?どうすんの?
あげく、かまやつさんゴロワーズの歌詞、忘れて曲を途中で止めてるし(笑)。
会場は大盛り上がり。
The denkibran、この後で出て行って何するの!?
動揺するメンバー(笑)
30分ぐらいだったでしょうか
ムッシュのソロライブが終わり、打ち合わせどおり、ムッシュまやつさんがThe denkibranを呼び込みます。
え?え?
どうすんの?
今さら出って、俺ら何するの?
と、正直、メンバー4人とも思ってたと思います(笑)だって、ムッシュかまやつのバックバンドをやるわけだから、「ノーノーボーイ」とか「バンバンバン」「ゴロワーズ~」とか、ムッシュの曲を中心に練習してたんですけど
弾き語りで全部、先にやられてるし(笑)
…と、思ったら、そこでムッシュが一言
「歌詞、思い出したみたいだから…」
え?
まさか…
まさか…
ゴロワーズ~もう一回やるの(笑)!?
っていうか、なんでもアリなんや(笑)
…と、1曲目で思ってからは、不安から一転、それは楽しいライブに様変わり。
どういうシステムでライブが進んでいったかというと
とりあえずバックバンドの我々は何の曲をやるか、まったく知らされてない。
で、ムッシュかまやつさんが、「キーはAね」とか一言だけ言って、唐突にギターでコードを刻みだすわけです。
かまやつさんが歌いだして、はじめて、それが何の曲がわかる
みたいな(笑)
こんな感じ
原因は、かまやつさんはキーEでやってて、The denkibranはキーAでやっちゃてた…というのがわかって、「そりゃ、あわないわ!」とステージで大爆笑したり。
なんやかんやで、1時間ぐらいは楽しくやってた記憶があります。
本当に楽しくて貴重な経験でした。
どこで何を言えばお客さんが盛り上がるのか?というのを熟知してる感じ。
もう本当に意味でのエンターテイナーでした。
ムッシュの一言、「レディースアンドジェントルマン!デンキブラン!」の一言で、起きた会場の大歓声は今でも覚えています。
打ち上げで
打ち上げでも本当にお茶目な方でした。ビートルズやザ・フーの60年代の話をしてたと思ったら、いきなり「ELLEGARDENはさぁ~」みたいな話をはじめたり。
その筋には有名な話なのですが、ムッシュかまやつさんのギターのコードの押さえ方はすごく独特で、押さえてるとこを目で見ただけでは、何のコードを押さえてるのかまったく謎。
出てる音も、テンション交じりの独特な響きで、すごく不思議なギターを弾く方でした。
今、思うと sus4 なのかな?この辺りは確証がありませんが。
JCのコーラスをかけたクリーントーンで、メジャーとマイナーをぼかす sus4 をパキーンと弾く感じは、これも今思うとPOLICEのアンディー・サマーズを意識してたのかな?などと思ったり。
今では確かめようもないですが。
最後に
あんまりTVを見ないので知らなかったのですが、年末にやってる特番「ダウンタウンの絶対に笑ってはいけない高校」でしたっけ?
あの番組に、ラグビー部のかまやつ君 みたいなキャラで、ムッシュかまやつさんが出てた時があったんですね。
共演した時の打ち上げで勇気を出して聞いたんです。
「なんで、かまやつさんクラスの人が、ああいう番組に出たんですか?」と。
そうしたら、ムッシュが、また満面の笑みで一言
「え?だって、おいしい じゃん!!」
あ、なるほど。
この人は全部わかってやってる、本当のプロの人だったんだなぁ。
なんて妙に関心したのは覚えてます。
いつも時代の真ん中にはいないけど、真ん中よりちょっとハジッコのベストポジションで、おいしいところをいつの時代も、飄々とキープしてるイメージの方でした。
日本で一番オシャレで、ロックの創世記から21世紀までのすべてを見てきたロックミュージシャン。
心よりご冥福をお祈りします。
本当にありがとうございました。