劣化コピーされて薄まっていくそれを、はたして初期衝動と呼んでいいのか?

ロックバンドをほめる時にたまに使われる「初期衝動」という言葉。

わたくし、実はこの「初期衝動」というものが少し苦手である。

厳密に書くと「初期衝動」って言葉が苦手である。

例)初期衝動をむき出しにしたパフォーマンスでステージを魅了する

…みたいなやつ

ロックバンドというのは、演奏技術での優劣というのももちろんありつつ

どんなに演奏がヘタでも基本的に「かっこよければ勝ち」だと個人的には思っている。

僕自身もよくバンドを見て「うわー、ヘタっくそやなぁ(笑)」みたいな発言をするのですが

これは別にけなしてるつもりは全然なくて、むしろ

「ヘタなのにかっこいい」

っていう極上の誉め言葉のつもりで言っている場合も多い(あんまり伝わってないけど)

「うまい」「へた」 の2極化で評価されがちな楽器演奏ですが

特にロックバンドの場合では「ヘタウマ」という謎の評価もあったりしますし

かっこよければ「ヘタくそだけど何か?」

と、ドヤ顔できるのがロックバンドの良いところだと思っている。



…と、リスナー、ファン目線なら、ここで終わっちゃう話なのですが。



ことプレイヤー目線になると、ちょっと話は変わってくる。

演者、バンドマン、アーティスト、パフォーマー…と呼び名は色々とありますが、ここからは演ってるほう目線の話。



完全に僕の趣味、主観の話にはなりますが

演奏者として

そのヘタウマにあぐらをかいているプレイヤーは正直あまり好きではない。

ヘタなのはいっこうにかまわないんです。

マジで。

僕自身も残念ながら、ウマいか?ヘタか?で言えば、ヘタな方に入る自覚もあるし。

「ヘタでもかっこよければ別にいいやん?」

とは常に自分に対しても他人に対しても思ってます。

ただ、そのヘタな現状に「あぐらをかいてる人」はあまり好きじゃない。

って話なんです。



そういう「あぐらをかいてる」タイプの人の言い訳によく出てくるんです。

「初期衝動」って言葉が。

それでたぶんあんまり好きじゃないんですよね。



例)初期衝動でかき鳴らすギター!!

↑これ、あらためて考えてほしい

「初期衝動でかき鳴らすギター」ってのは本当にかっこいいと僕も思う。

まさに青春の爆発である。

そんなかっこいいシーンをライブハウスでいっぱい見てきた。

しかし

しかし

改めて考えてみよう。

その「初期衝動」ってのはそもそも何か?

「バンドをやってモテたい」なのか

「やっとバンドができた」なのか

「エレキギターを爆音で人前で鳴らしてみたい」なのか

別になんでもいいんですが、それをライブで全力でぶつける瞬間。

かっこいいね

これぞロックバンド!!

とは思う。

…思うんだけど

「で、次のライブはどうすんの?おんなじことするの?」

なんて意地悪なことを思ってしまうんです。

「最初の衝動だけで何回も同じことできるか?」と。



一回目は本物だと思うんです。

まさに「初期衝動」。

それは「うそのない初期衝動」。

でも二回目以降で同じことをするとき、最初の「初期衝動」を改めてコピーしてないか?と。

それってもう極論「劣化コピーされた初期衝動」じゃないっすか?と。

薄まっていく「初期衝動」風な何か。



純粋な初期衝動を持続できる人

もちろんいるんでしょうけど、人間は悲しいかな、学習していく生き物です。

次のライブはもっとこう表現しよう

次のライブの時はお客さんをもりあげるためにもっとこうやろう

…などなど、パフォーマーとして、演奏者として学習してくにつれて

言い方をかえれば「学習」という邪念が入った時点で、それって「初期衝動」って呼んでいいのかな?と。

「初期衝動」に対して、「学習」や「成長」っていうのは

「初期衝動」を濁らしていく、邪魔なものでしかない気がするわけです。

もちろん、どんなに成長しても「初期衝動」を持って、ものごとに取り組めてる人もいるのかもしれません。

ただね、

「初期衝動」という言葉を成長する気のない人が

「言い訳」に使ってるケースの方が多い気がする。



予定調和になった「初期衝動」なんて、マジでつまらんし

これがオレの「初期衝動だ!」なんて勢いだけで、練習すらする気のないバンドも見ててつまらん。

などと

以上のことから「初期衝動」という言葉に対してあまりいいイメージがない。

いや、わかるよ

偽物になりたくないんですよね?

いつか、憧れた本物に自分もなりたくて

偽物にならないように

いつか見た、ダサいと思った誰かみたいにならないように

普通にならないように

小奇麗にまとまらないように

そんな時に使える、ちょっと都合の良い言葉だったりしますもんね。

「初期衝動」って。



考えながら、書いてるので最初に書こうと思ってた内容や結論からどんどん離れていってるのですが(笑)

ここで気づいた。

僕は「初期衝動」って言葉が嫌いなわけではないみたいで

「初期衝動」を言い訳にして、「成長を放棄してる人」が嫌いなだけなんだな…と、改めて気づいた。



大丈夫だって。

「初期衝動」なんて言い訳しなくても。

普通にやっても、あなたならどうせ普通にならないから。

ちゃんとかっこいいから安心して成長しろ。

…なんて言葉を送りたい。



けっきょく何事もバランスだと思うんです。

初期衝動だけじゃつまんないし

洗練されてくだけじゃ退屈だし

個人的には「それでも初心を忘れない、匠の業の境地」みたいなところを みんなで目指したいもんっすね。

なんというか、「初期衝動」なんて都合のいい言葉に頼らないで、せっかくはじめたんだから長く続けてほしい。



…とここまでダラダラ書いたんですけど

最近、TikTok用に何か動画を作ろうと思って

昔の自分のライブ動画をひっぱりだして見てたんですね。

なんというか。

自分ではあの頃から変わってないつもりだったのに、

昔の自分の方が今よりあきらかにかっこいいんですよね。

演奏はたぶん今の方がうまいんですが、なんというか、もう勢いがある。

自分で見て「かっこいいな、オレ」って思ってしまった。

初期衝動も大事だよなぁ…と。

ちょっとショックだったりもしました。

初期衝動なんて、自分で狙って取り戻せるもんでもないとは思いますけど

正直、くやしい。

自分に負けるのは悔しいので、勢いだけはなくさずにいたいもんです。

TikTok用なので面白おかしく編集はしてるんですけど、こちらのライブ映像






初期衝動むきだしてでやるので

そろそろ12/20(水)のThe denkibranのライブ

みなさま、チケット買ってください。

これが終わると3月ごろまでたぶんライブありませんので。

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